2013年 04月 30日
花まつり 栗原知子
今じゃないとすれば。
人々 は両の掌に目を落とし、
すでに書かれた罪悪と書かれようとしている罪悪とを読んだ。
再び面を上げたとき、頭上 には桜が開いていた。
それはいつもより早く美しく咲いたくらいだった。
春。
絵本を閉じたあとの寝室で、母親は小さな子に希望を説いた。
説きながら、胸に冷たく落ちる絶望とも見つめあう。
洗面所で身を折る間、彼女の心にはこの世の美しいものが去来する。
地中に眠るエメラルド。まだ誰も見ない花畑。谷間を行く牡鹿。
布団へ戻るその顔は孤独さで輝いている。
お母さんはきっとよい赤ちゃんを産むだろう。子供は安心して眠った。
花が落ちて紅い萼だけになっても桜は桜だったし、
もしかしたら花の頃よりもっと桜だった。
ぼやぼやと熟れる視界はどこへ向かうのだろう。
ハッピー・バースデー、
散り落ちた花びらの上で人々 はそっと掌を合わせた。
ハッピー・バースデー・トゥー・ユー。
お誕生日席の釈迦像を囲んで甘茶がふるまわれ、
空は素っ気なく晴れわたり、
こうしてまたひとつ、名のない春が見送られていく。
(朝日新聞 4月23日より)
今日はワタクシの誕生日。
誕生日が同じ日の知人、
詩人のIさん、昨年鹿児島から横浜に戻ってきた。
BBBrithers & PetiteMaisonのドラム小島さんは京都にいる。
ハモンドショップの山本社長は大阪の長居。
仕事仲間のFさんは横浜駅そばに住んでいる。