2023年 07月 11日
箱根山戦争
箱根といえば人気の観光地、私も大好きです。
かつて箱根の観光開発をめぐって大資本が火花を散らしていたことをご存じでしょうか?
「箱根山戦争」ともいわれ国会や裁判所をも巻き込んだ20年に及ぶ大騒動でした。
この騒動を題材に取り上げたのが獅子文六の小説「箱根山」、さすがの筆力で極上の娯楽作品に仕上がっています。江戸時代から対立している二つの老舗旅館が舞台、ロミオとジュリエットのように惹かれあう若い男女が主人公です。その老舗旅館に巨大資本が接近してきて物語はダイナミックに展開します。
1662年には映画化され若い二人を加山雄三と星百合子が演じました。
この対立はもともと別荘地開発を進めていた西武に対抗して東急・小田急が観光道路を建設しバス路線で箱根山の観光利権を手に入れようとしたことから始まっています。
その後、それぞれが競うようにロープウエイやケーブルカーを開業、さらには芦ノ湖の遊覧船でも激しい顧客争いが続きました。そこに第三の大資本、藤田観光が殴り込みをかけ小涌園や芦ノ湖スカイラインを完成させます。数々の法廷闘争を経て大資本が手打ちに至ったのは1968年だそうです。
ところで電車やバスで箱根観光をする場合「乗り放題切符」が便利ですが、そこには今も「戦争」の名残が感じられます。
小田急が盛んにPRしている「箱根フリーパス」は箱根登山電車、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウエイ、箱根海賊船、箱根登山バスなどが利用できます。
一方、西武系の伊豆箱根鉄道「箱根旅助け(はこねたびだすけ)」は伊豆箱根バス、箱根駒ヶ岳ロープウエイ、箱根駒ヶ岳ケーブルカー(廃止)、箱根十国峠ケーブルカー、箱根芦ノ湖遊覧船、箱根園水族館などが利用できます。
つまり同じ道路を走っていてもそれぞれ指定の会社のバスにしか乗れません。船はそれぞれの発着港が違います。
ところで現在は西武線の駅でもライバルの「箱根フリーパス」を販売していますが「箱根旅助け」は数か所の観光館内所だけで小田急の圧勝といったところです。