大規模な野外仮設劇場が楽しみな両劇団だが、どうやら今年はどちらも見られないようで残念でならない。
「水族館劇場」は昨年の公演終了後に座長桃山邑氏が、このスタイルはいったん閉じ少し充電すると語っていた。
「維新派」の主宰松本勇吉氏が最近のHPで、今秋は舞台なき演劇を犬島で作ると発表した。
奇しくも両劇団とも舞台装置を脱皮、寺山修司が新宿や渋谷で街中で実験演劇を行い、唐十郎が赤テントを、佐藤信が黒テントを興した時代を思い出す。
どうしたら自分を純粋に表現でき、伝えることができ、その何かを共有できるのか・・・という難題に挑戦し続ける演劇人、好きだからやっているにしても、その求道的態度には憧れる。
ところでつい最近、入方勇(いりかたいさむ)氏が昨年秋に亡くなっていたことを知った。享年37歳とのことだ。
アングラ俳優である彼は、水族館劇場公演にも多数ゲスト出演。特に昨今の、客席下のプールから突如出現する弱気なカッパ姿が見事であった。
彼は数年前に廃業した見世物小屋「団子屋興業社」のお宝である「カッパのミイラ」などをを引き継ぎ、自ら「入方興業社」を創設。大寅興業社ひとつだけとなっていた日本見世物小屋シーンにおける起死回生のはずであった。
浦和調神社の大寅興業で見た修行中の入方氏の必死な鼻鎖やろうそく芸を今も思い出す。
その後「デリシャスウィートス」の姉ちゃんたちがサポートして入方興業社の見世物小屋はなんとか船出して新宿花園神社や九段靖国神社などで興業していた。
唯一の見世物小屋後継者が消えた。